元首相・吉田茂著「日本を決定した百年」によると、吉田首相は、太平洋戦争によって破壊しつくされた日本再建の要は、まさに教育にあると確信していたようです。著書の中には、「生活に追われていた民衆はなかなか子供を学校にやろうとしなかったが、政府は就学率を高めるための努力を惜しまなかった。地方の地主たちは、多額の金を寄付して学校の設立を助けた」と、当時の状況が書かれています。
 「日本を復興させるのは教育以外にない。戦争によって国を荒廃させ、何も子孫に与えるものを持っていないが、せめて立派な教育だけはしてあげたい」という気持ちが伝わってきます。
 このように、教育を重んじたことが日本の奇跡的な復興の原動力となりました。かつての日本には、篤志家(とくしか)(※)が才能ある少年少女を個人的に支援する気風がありました。傍観者でなく、人材育成に主体的に参画していたのです。我が国が教育立国といわれた由縁でもありましょう。
 そして、時は、卒業シーズン。かなり前から、高校進学が当たり前の時代になってはいます。しかしながら、家庭の事情等により、希望する進路を変更・断念せざるを得ないお子さんもたくさんいらっしゃいます。高校を義務教育の対象期間にすることを求める意見が年々強まっているという事実もあります。そうした中で、国の未来を開く政策の鍵となるのは、官民の思い切った教育への投資ではないでしょうか。
 混迷の昭和・平成時代に関わった私たちが後世に向けて為すべきことは、明日の日本、そして上里を創る人材を育む環境の整備である、と信じています。

(※)篤志のある人、社会奉仕・慈善事業などを熱心に実行・支援する人